AIRA S-1でのユニークな機能、「Draw」モード。ハードウェアシンセではあまり見かけない、ユニークな機能だ。この記事では、この機能を使った波形の作り方を解説する。
Drawモードは、一波長分のデータを16個のサンプリングポイントで表現する。ただ、波形の実際の形を見ずにこの機能を使うことができるのは、既にいろいろな波形とその鳴り方が身についている人だけだと思う。
そんなわけで、この記事ではソフトウェアのオシロスコープで波形を見ながら作る方法を説明する。S-1をPCに接続し、出音をPCのオシロスコープソフトで見ながら、波形を編集するわけだ。
使うオシロスコープは「Soundcard Oscilloscope」という割と昔からあるソフトだ。
ダウンロードはこちらから。
次に、S-1をPCにUSBで接続する。
まず、S-1がサウンドカードとして認識されていることを、コントロールパネルのサウンド設定などで確認する。
さらに、録音デバイスとしてのS-1を、「このデバイスを聴く」に設定すると、PCのスピーカーでS-1の音をモニターできる。
次に、S-1の出力をオシロスコープの入力につなぐ。
Soundcard Oscilloscopeをインストール、起動したら、Settingsタブを開く。
ここでオシロスコープの入力を選択できるので、inputとしてS-1を選ぶ。
これでOscilloscopeタブを選択し、S-1を鳴らして、何か波形が画面に出ればOK。S-1の音量は最大にする。
次に、波形編集がしやすくなるようにS-1側の設定を行う。
まず、Patternボタンを押してどこか空きパターン(初期化済みパターン)を選択する。
初期パターンでは、矩形波100%、カットオフ全開、レゾナンス無し、エフェクト無しになっているが、エンベロープが若干設定されている。
ここで、ENVのAttack、Decay、Releaseを最小、Sustainを最大にする。
これでキーを押している間は常に最大音量で音が出るので、波形をオシロスコープで見やすくなる。
HOLDボタンを押せば、キーを離しても音を出したままにできる。
これで準備ができたので、DRAWモードに入って行く。
SHIFT+5を押すとDRAWモードに入り、表示が「SW」になる。
この状態で、2(ENTER)を押す。
すると表示が「OFF」になっているが、これをノブを回して「SLPE」にする。
1(EXIT)を押すと表示が「SW」になる。もう一度1(EXIT)を押してSWメニューを抜ける。
何かキーを押して音を出し、波形をオシロスコープで観察する。三角波がオシロで見えればOKだ。
いったん、ここまでで上記が何をやっているのか整理しておく。
- DRAWモードで作成する波形は、矩形波との入れ替えになる。SW=OFFなら矩形波、そうでなければDRAWで作成した波形となる。
- DRAWモードの波形は、2つの出力モード「STEP」と「SLOPE」がある。上記ではSLOPEを選択している。
- DRAWモードの波形の初期状態は、三角波となっている。
SWで行っている「矩形波」「STEP」「SLOPE」の切り替えは、「SHIFT+鋸波ノブ」でも行える。
SHIFTを押しながら鋸波のノブを回すと、3つの波形が切り替わるのがオシロスコープで確認できる。
ちなみに、STEPモードでは波形が下図のように階段状になるが、これはSLOPEモードと比べて、元の波形の8倍の周波数(=3オクターブ上)の矩形波の成分が重なってきていると見ることができる。その分、音に「キーン」という高音成分が付加されることになる。
では、いよいよ波形を編集してみる。
再びSHIFT+5でDRAWモードに入る。「SW」と表示されているのを、ノブを回して「FORM」に変更する。
すると、16個のキーが様々な明るさで点灯あるいは点滅している状態になる。
各キーの明るさが、波形を16等分したそれぞれのポイントの「絶対値の大きさ」を表している。
一部のキーは点滅しているが、これはそのキーに相当するポイントの値が「負の値」であることを表している。
分かりにくいのだが、この状態で既に波形も編集できる状態になっている。
キーを押さえると、設定されている値が表示される。
キーを押したままノブを回すと、設定値を変更することができる。
例えば、キー1~16の値を以下のようにすると、サイン波を作ることができる。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
0 | 38 | 71 | 92 | 100 | 92 | 71 | 38 | 0 | -38 | -71 | -92 | -100 | -92 | -71 | -38 |
設定し終わったらSHIFT+1で編集を終了する。
キーを鳴らして波形を観察すると、入力した波形となっていることがわかる。
AIRA Compact S-1の内蔵波形は矩形波、鋸波、ノイズだが、DRAWモードを使うことにより、矩形波の代わりに三角波やサイン波など別の波形を使うことができるようになる。
独自のウエーブテーブルを読み込めるようなシンセサイザと比べたら自由度は低いが、特定の次数の倍音を強調してオルガンのような音色を作ったりすることは比較的簡単にできる。
制約としては、制御ポイントが等間隔に16個で、制御ポイント間が補間されるので、原理的に8倍以上の倍音については描くことができない。例えば矩形波や鋸波も、垂直に変化する点を描けないからこの方法では作成できない。
だが、モードをSLOPEではなくSTEPに設定することで16倍以上の倍音成分を付与することは一応可能だ。また、今回紹介できなかったが「Multiply」パラメータを使うことで、オシレータシンクのような感じで倍音を加えることもできる。
S-1は基本的に減算型のシンセだが、この機能は倍音を足していく使い方ができるユニークな機能なので、持っている方はぜひ試してもらいたい。
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