USBケーブルで音質が変わるのか?真実はこうだ

巷にはオーディオ用と称して高価なUSBケーブルが売られていたり、お試し版として雑誌の付録になったりしているようだ。
USBケーブルで音質が向上したり低下したりするかというと、まあ常識的に考えると変わらないはずだ。
デジタルデータに関して言えば、USBケーブルの役割はデータが化けることなくDACに届けば完了する。
もしこの役割に失敗した場合は、再生音声にプチプチノイズが出るはずで、音質以前の問題だ。
ただ、問題は電源ラインである。
先日も書いたように、USB電源には結構いろいろなノイズが乗ってくる可能性がある
USBケーブルの違いが電源ラインに影響を与え、バスパワー動作しているDACの音質に影響を与える可能性は考えられないでもない。
というわけで、TASCAM US-200といつものWaveGene/WaveSpectraのコンビで、手元にあったUSBケーブルを使って、ケーブルの違いで音に変化があるかどうか測定してみた。
テストしたUSBケーブルは以下の通り。
さすがに、高価なオーディオ用USBケーブルをテストのために買う気はしなかったので、どれも一般用のものだ。
(1)LUXMANのケーブル(100cm)
Stereo Sound誌の付録USB-DACに付属していたもの。

(2)ARVEL AUG15BK(15cm)
BUFFALOの短いUSBケーブル。形状を固定することができる。

(3)何かの付属品のケーブル(30cm)
たぶんカードリーダーかUSBハブの付属品。
フェライトコアは無く、今回のケーブルの中で一番弱そうなケーブル。

(4)普通のUSBケーブル(100cm)
よくあるタイプのケーブル。これも多分何かの付属品。
B端子側にフェライトコアが付いている。

これ以外に、USB規格の限界である5mのケーブルも持っているのだが、US-200を接続してみたところ、デバイスを正常に認識しなかった。
長すぎるケーブルは音質以前の問題があると言うことで、USBケーブルは長くても3m以内に収めるのがよいだろう。
テストは、以下のような構成で行った。
・US-200のLINE OUT3-4をLINE INにRCA赤白ケーブルで接続
・US-200の入力ゲインはツマミのほぼ中央(12時)に設定
・以下をケーブル(1)~(4)について実施
 ・WaveGeneでスイープ信号(FLATSWEEP_131072.WAV)を再生し、WaveSpectraで周波数特性を観測
 ・WaveGeneで1KHz、-80dbサイン波を再生し、WaveSpectraで歪みの様子を観察
 ・WaveGeneで何も再生せずにWaveSpectraでノイズのピークを観測
なお、US-200についてだが、これは普及価格帯のアマチュア向け音楽制作用機材だ。
以下に分解写真があるが、これを見ると内蔵のDACはAK4384、ADCはAK5381らしい。
自立: TASCAM US-200 分解

実測した周波数特性は、0~-10dbの範囲でこんな感じだ。
(縦軸は正規化しているので、実際のゲインはもっと小さい。)

さて、計測した結果を以下に示すが、まあ結論的には、ケーブルによる違いは無いといって良いだろう。
比較しやすいように、4つのケーブルをGIFアニメで連続して表示しているので、各画像をクリックして観察してほしい。
なお、GIFアニメ作成はGiamを使わせて頂いた。
(A)周波数特性

フルスクリーンでスクリーンキャプチャして50%縮小したので、スケールが見辛いが、プラスマイナス1dbである。
高域の特性は若干でこぼこしているが、縦軸が1dbで測定値を正規化しているから気にしても仕方ないレベルだと思う。
このアニメだけ見たら、ケーブルごとに微かに変動しているように見えるが、実際には同一ケーブルの測定中でもこの程度の変動はしている。
つまり測定誤差の範囲と言っても差し支えないだろう。
(B)歪み

こちらの縦軸は-160dbまで取っている。
表示はピーク値。
ケーブルの違いで何か影響があるということはなさそうだ。
(C)ノイズ

こちらも縦軸は-160dbまで取っている。
表示はピーク値。
ノイズが特に多いとか少ないとかいうことはなさそうだ。
というわけで、少なくとも自分が見るかぎり、バスパワーDACであってもケーブルで音質に影響を受けるということは無さそうだ。
今回の計測結果を見ても、そもそも40KHzでも0.5dbしか特性が落ちていない。
つまりUSBケーブルで改善できる余地がほとんどない。
仮にこの0.5dbをUSBケーブルで改善できたとしても、この程度の変化はスピーカーで聴いていた場合には全く無視して良い。
異常に敏感な人がヘッドホンで聴いた場合には、もしかしたら気づくことができるかもしれない。
しかしそもそも0.5db程度であれば、改善したければイコライザで持ち上げれば済む話である。
音質向上のために投資するなら、USBケーブルを購入するよりも、次の記事以降で説明していくように、計測用マイクを購入して、部屋と機器に合わせた音響補正を行うことを強くお薦めする。

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