さて、それではDRCの実際の手順を書いていく。
それぞれの手順で何をやっているのかは、前々回の記事を参照。
前回、RoomCorrectionとDRCDesignerの2つを紹介したが、ここではDRCDesignerを使って解説していく。
RoomCorrectionのほうは、付属のドキュメントに必要なことは解説されているし、もしそれで分からなければ使わない方が良いだろう。
まずは、DRCDesignerフォルダ内の
DRCDesigner.bat
を実行する。(が、私のWindows7の環境では起動しなかった。)
もしこれで起動しない場合は、
DRCDesigner.jar
をダブルクリックする。
すると、こんな画面が現れる。
タブが4つあり、それぞれ
「Record Sweep」(スイープ信号を録音)
「Target Designer」(補正後の周波数特性の指定)
「Generate Standard Filters」(標準的なフィルタを生成)
「Generate Custom Filters」(カスタマイズしたフィルタを生成)
となっている。
最初の3つをこの順で使えば、とりあえず結果を得ることができる。
(1)測定
まず、測定用のマイクが必要だ。
お薦めは以前も紹介したべリンガーのECM8000。
ただ、これはファントム電源を持つオーディオインタフェースが必要だ。
私はいつものTASCAM US200を使用した。
また、測定時間は数分かかるので、できればマイクスタンドが欲しい。
ECM8000の場合は、以前紹介したように変換ネジを使えばカメラ用三脚が使える。
マイクはリスニングポジションで、できるだけ左右のスピーカーから等距離になるように設置し、正面方向に向ける。
ECM8000は無指向性マイクだが、若干上向きに振るほうが良いだろう。
なお、ステレオ入力のオーディオインタフェースの場合、マイクは「左チャンネル」に接続すること。
オーディオインタフェースが利用可能になったら、左上の「Get Sound Interfaces」ボタンを押す。
すると、再生用デバイス、録音用デバイスの一覧が表示されるので、それぞれ適切なデバイスを選択する。
チャンネル番号は、通常、左が1、右が2である。
ここで、「Record Sweep」ボタンを押すと測定が始まる。
左チャンネル、右チャンネルの順にスイープ信号が再生される。
再生している間は信号音がマイクから録音されているので、静かな環境でマイクは固定しておく。
1回目はアンプの音量調節とマイクのゲイン調節を行い、改めて再度測定するのが良いだろう。
アンプの音量は通常の使用音量か、それよりやや大きめくらいで良いはずだ。
途中で中断してしまう場合は、録音データがクリップしているので、マイクゲインを下げるかアンプの音量を下げる。
正常に終了した場合は、左右のピーク音量が表示される。
この音量は、-20dbより大きいほう(負の数なので、数字が小さいほう)が良いと思う。
-30dbより小さい(数字が大きい)場合は、やや録音レベルが低すぎる。
(2)周波数特性の指定
次に「Target Designer」タブをクリックする。
ここでは補正後の周波数特性を指定できる。
まずは「Flat」でよいと思うが、スピーカーによっては20Hz~20KHzでフラットというのは無理があるかもしれない。
編集する場合は、左クリックで青丸の追加、右クリックで青丸の削除を行う。
設定した青丸をドラッグして動かすことはできない。
たとえば、40Hzからフラットにするには、40Hzのところで左クリックして青丸を作成し、20Hzのところの青丸を右クリックで削除する。
(3)補正用インパルス応答の生成
最後に「Generate Standard Filters」に移動し、「Generate Selected Filters」をクリックすると、補正用のフィルタのインパルス応答が生成される。
フィルタタイプが複数あるが、全部生成して聞き比べて、良さそうなものを選べばよい。
なお「Generate Selected Filters」がクリックできない状態になった場合は、サンプリングレートを選択しなおせば元に戻るようだ。
なお、マイクの特性の校正用データがある場合は、ここで指定できる。
生成されたフィルタは、DRCDesignerフォルダの中の「ConvolverFilters」フォルダの中に入っている。
形式は32bit floatのWAVファイルだ。
Audacityでこのファイルを開くと、前回の記事のようなインパルス応答波形を見ることができる。
というところで、こうして出来たフィルタのプレイヤーソフトでの利用については次回。
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