DRCで機器・部屋の音響特性の補正をしてみる(4)

前回の記事では、DRCDesignerを使って補正用フィルタを生成するまでを書いた。
ここで、ちょっと脇道に逸れるが、前回の記事で解説したDRCDesignerではなく、RoomCorrectionのほうを使った場合は、補正用フィルタがモノラルのPCM形式で生成される。
これを音楽プレーヤーで使うには、AudacityでWAV形式に変換する必要がある。
具体的には、Audacityの「ファイル」→「取り込み…」で「RAW形式の取り込み」を選択し、PCMファイルを選んだら、データ形式を
 エンコーディング:32 bit float
 チャンネル:1チャンネル(モノラル)
で取り込む。

左チャンネル、右チャンネルのそれぞれについて、取り込んだらチャンネルの設定(図で黄色い枠で囲まれている部分の左のほうにある設定パネルで、▼をクリックすると出てくるメニュー)で、左チャンネルまたは右チャンネルを指定する。

その後、「ファイル」→「書き出し…」でWAVファイルとして保存する。
このとき、メニューには「WAV(Microsoft)16bit PCM 符号あり」と表示されているのだが、実際にはちゃんと32bit Floatで保存されるようだ。
1チャンネルずつWAVに変換して、テキスト形式のConfigファイルから参照する方法もあるが、ステレオのWAV形式にしておくほうが何かと便利ではある。
閑話休題。
生成した補正用フィルタが入ったWAVファイルの使い方の話に戻る。
補正用のインパルス応答は、再生したい原信号と「畳み込み(Convolution)」演算を行って、原信号を変換する。
  畳み込み – Wikipedia
以前の記事「DRCで機器・部屋の音響特性の補正をしてみる(1)」で書いた、ωが原信号、f^-1が補正用インパルス応答、f^-1(ω)が畳み込みにより得られる信号にあたる。
従って、再生用ソフトはインパルス応答で畳み込みを行いながら再生するという機能が必要だ。
ここではそういった再生ソフトとして、JRiver Media Centerとfoobar2000を紹介する。
(1)JRiver Media Centerの場合
JRiver Media Centerには最初からConvolutionエンジンが組み込まれている。
「プレイヤー」→「DSPメニュー…」を選択し、設定ウインドウから「Convolution」をチェックする。
そして、設定で補正用フィルタのWAVファイルを指定する。
DRCDesignerを使った場合、このWAVファイルは「ConvolverFilters」フォルダに入っている。

フィルタに問題がなければ、ステータスエリアに処理中:と表示されるはずである。
この状態で畳み込み処理が動作している。
(2)foobar2000の場合
foobar2000は、Impulse Response Convolverというプラグインを使うと、DRCDesignerで作成したインパルス応答を利用できる。
foobar2000: Components Repository – Impulse Response Convolver
このプラグインをfoobar2000のcomponentsフォルダにコピーする。
そして、foobar2000の設定画面で「DSP Manager」を選択すると、Available DSPsにCovolverが入っているはずなので、これをアクティブにする。

次に、「Configure selected」ボタンでConvolverの設定画面を呼び出し、Impulse fileに補正用フィルタのWAVファイルを設定する。
また、Level adjustでレベルを-10dbくらいに下げておくのがよい。
レベルを下げておかないと、演算の結果オーバーフローして、音が歪む場合がある。
JRiver Media Centerの場合は自動でレベルを下げてくれるが、foobar2000の場合は自分で最適値を探す必要があるようだ。
(3)その他のソフト
自分では試していないので、リンクだけ。
DRCDesignerの中にも含まれている「Convolver」はオープンソースの畳み込み演算プラグインで、複数の再生ソフトに対応しているようだ。
ホームページはこちら。
Convolver — a convolution plug-in
ただ、開発は2006年で止まっているようなので、使えない可能性もある。
私はfoobar2000にfoo_vst: VST 2.4 adapterを入れて、そこからConvolverVSTを使ってみようとしたが、うまくいかなかった。
foo_vstとConvolverVSTのどちらの問題化は不明。
WinAmpも上記Convolverが利用できるようだ。
VSTを使うためのプラグインもある。
Christian’s Blog » WinAmp

また、MusicBeeはWinAmpのプラグインが使えるらしいので、同様にConvolverが利用できるかもしれない。
なお、どんなソフトを使うにせよ、最後は耳で判断することが必要になる。
フィルタは複数種生成されたはずだが、それぞれ効き具合が異なるので、全部試して、合うものを選択する。
どれも合わない感じがしたら、再度DRCDesignerを起動して測定からやり直すのが良いだろう。
次回は、実際にDRCを使ってみた効果について、ちょっと紹介する。

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