前回までで、Digital Room Correctionを行うための作業は全て書いた。
これで、部屋や機器の音響特性をキャンセルして、原音に近い音を耳に届けることが可能になる。
今回は、使ってみた実際の効果について書いておく。
なお、これはあくまで私のシステムに適用した場合の話であって、このブログの通りのやり方をしても同じ結果が得られるとは限らない。
端的に言って、音は「激変」した。
よくオーディオでケーブルを換えたら激変した、なんて話があるが、そういうものではなく、正真正銘イコライザ以上の激変である。
すぐ分かるところでは、PIEGA TS3で盛ってあった低域が抑えられ、全体的に非常にフラットな帯域バランスになった。
帯域バランスに関しては、よりソースに近い音が得られるようになったと言ってよいと思う。
低域を抑えたから低音が不足するかというと、必ずしもそうではなく、TS3特有の100Hz~200Hzあたりの帯域の山が抑えられたことにより、それより下の低音がよく聴こえるようになった。
次に、DRCによる演算の際に音量レベルを下げてしまうので、10dbほど音量が下がり、その分、ボリウムを上げる必要があった。
これはあまり本質的な問題ではないが、音量の小さなアクティブスピーカーなどを使用している場合は問題になるかもしれない。
そして、音の分離と定位が非常に良くなった。
ただ、ソースの音を正しく反映しているのかどうかはよくわからない。
ボーカルを聞いていると非常に心地良いので、満足している。
参考までに、ホワイトノイズを再生して、それをDRCオフの状態とDRCオンの状態でマイクで録音したものを載せておく。
これがソースとなるホワイトノイズ。
サンプリングレートは44.1KHzで、フラットな帯域を持っている。
このホワイトノイズをDRCオフの状態で、JRiver Media CenterでPIEGA TS3から再生し、マイク(ECM8000)で録音すると、このような音になる。
以前にも何度か書いているが、100~600Hzくらいの低域の量が相対的に多い。
これはこれで小音量でも低音の迫力があるし、聴きやすいバランスではあるが。
なお、22KHzまでしか出ないホワイトノイズを96KHzサンプリングで録音したために、20KHz以上の高音は急に減衰しているように見えているが、実際にはそもそもソースに高音が含まれて居ないだけである。
そして、DRCオンの状態で録音したものがこちら。
かなり帯域バランスがかなりフラットになっている。
聴感上も、音量は下がったが帯域バランスは原音に近づいていることが分かる。
というわけで、これだけ音が変わるというのは、ちょっと予想外だった。
思っていた以上に、単にイコライザで帯域バランスをいじるのとは違っていた。
定位が良くなったために全体的に音がスッキリし、見通しが良くなったような感じがある。
DRCでは周波数特性だけでなく、位相も補正されるようなので、そのためかもしれない。
欠点としては、やや音が平板になったような気もする。
これはしかし、帯域バランスや音量が変化してしまっているので、実際にそうなったか、単に音量が落ちた影響でそう感じているのか、まだよくわからない。
一般的に、音量が下がると音質は下がったように感じられてしまうものだからだ。
現在は、DRCをオフにしたときの帯域バランスが不自然なバランスに感じられるようになってしまったので、しばらくはDRCありのままで使ってみる積もりだ。
今回の実験の結論としては、PCオーディオにおいてはDRCはぜひ一度は試してみるべきである。
測定用のマイクは必要にはなるが、音質への影響など全く無い高価なUSBケーブルを買うよりは、はるかに投資効果が高いと思う。
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