デジカメの「実際の」解像度の話

昨日、WX1には「1000万画素の必要も無かったろうと思う」と書いてしまったが、そもそもコンパクトデジカメにはどのくらいの解像度が必要なのだろうか。

これはなかなか難しい問題で、レンズの性能や、小さなセンサに多くの画素を詰め込む弊害(感度、精度、S/N、etc.)など、いろいろな要因がある。

商品となっているデジカメの中にも、「レンズの性能が悪くて、画素数だけ多くても意味がない」と感じるものがあるのも事実。

一つの指標としては、dpreviewが掲載している解像度チャートがある。

たとえばDSC-HX1だと、こちらのページにチャートが載っている。

ここで、中央付近に下のような図があるが、これを見るとカメラの実際の解像度が分る。

HX1-dpreview-chart.jpg

解像度はLPH(Lines Per Picture Height:写真の縦の長さに対する線数)で表す。
画面中に線が何本まで識別できるか、という意味だ。

HX1は水平・垂直とも、絶対解像度(Absolute resolution)は1800LPHと評価されている。
実際、上の図をみると18という数字の付近までは線が分離していることが分る。
1800を超えると、だんだん線と線の境界があいまいになっていく。
従って、HX1では少なくとも縦1800ピクセルは必要、ということになる。

そして判別できなくなったところが消失解像度(Extinction resolution)だ。
HX1は水平2300、垂直2200となる。

これから考えると、ピクセルを正方形、写真の縦横比を4:3とするなら、HX1では

 縦2300ピクセル、横2300×4/3 = 3067ピクセル

が必要十分となる。実際のHX1の解像度は3456×2592ピクセル。
まあ、10%ほど多いけれどいい線だとも言えるし、センサの解像度がボトルネックになっている可能性があるとも言える。

で、ここから一般論になる。

望ましいのは、レンズの性能とセンサの解像度がバランスが取れていることだ。

ただし、デジカメの画像を「等倍」で鑑賞するなら、レンズの性能がセンサを上回るほうがよい。
画面上でピクセルごとに変化するので、ぼやけた感じがなくなり見栄えがよくなる。

この理屈から言えば、HX1のようにセンサがボトルネックになったほうが、等倍での見栄えはよい。
しかし、
・センサの物理的なサイズが小さくなるほど
・画素数が多くなるほど
レンズはより精細な像を結ばねばならず、レンズへの要求条件は高くなる。

だから逆説的になるが、センサは大きくて低解像度がよい。

大きな低解像度のセンサは、レンズに対する要求条件が低くなる。
相対的に、等倍で鑑賞したときの見栄えがよくなるわけだ。

一方で、HX1のように高倍率のズーム機を小型に作ろうとすれば、センサは小さいほうが有利だ。
ズームレンズは、同じ倍率ならセンサの大きさに比例して長くなるからだ。

そんなわけで、コンパクトで画質がよくてズーム倍率も高い、という理想のカメラはなかなか出てこない。

ただ、低倍率ズーム+大型・低解像度センサで、等倍での見栄えのよいデジカメ、というのがもっと出てきてもよいと思う。

ちなみに画質では定評のあるFinepix F31fdのLPHは水平1700、垂直1750と、HX1とほぼ同じ。

Fujifilm FinePix F31fd Review: 16. Compared to…: Digital Photography Review

同じく、低解像度だが画質に定評のあるNikon D40(+Nikkor 50 mm F1.8)のLPHは水平1600、垂直1550。

Nikon D40 Review: 24. Compared to…: Digital Photography Review

最近のデジカメでは、フジのFinePix F200EXRは、水平2500、垂直2300を叩き出している。
ただ、ちょっとモアレが出ているが。

Fujifilm FinePix F200EXR Review: 21. Compared to…(Resolution): Digital Photography Review

また、Powershot 960IS(日本ではIXY DIGITAL 510 IS)も水平垂直とも2300だ。
優秀だが、解像度4000×3000はちょっとオーバースペックかも。
一眼レフだと、消失解像度が3000前後のものもあるが…。

なお蛇足ながら、LPHの1割程度の差は気にしないほうがよい。
そもそもLPHは白黒のチャートでスタジオで撮影した場合の、ある特殊な環境での評価だ。
輝度だけでなく、カラーまで考えると、今のデジカメではLPHで示されるほどの解像度はそもそも出せない。

実際の利用シーンでは、発色や、画像処理(ノイズリダクションやシャープネス)のほうが、見栄えへの影響はよっぽど大きい。

ただ、スペック上の画素数よりもLPHのほうが大分低いとしたら、ちょっとなんだかなあ…という程度の話である。


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