CMスキップとネットTV

ハードディスクレコーダを使ったCMスキップの是非が話題になっている。

野村総研がハードディスク録画のCMスキップによる損失は約540億円などというレポートを出したり、それがまた計算間違いじゃないのかという議論が沸き起こったり。

でも、実はぜんぜん違う方向でぜんぜん別の世界が開けつつあることに気づいてしまった。

その話は後でするが、そう気づかせてくれたのは無料のネットTVであるパソコンテレビGyaOである。

GyaOは完全無料のネット放送だ。
視聴にあたってメールアドレスと若干の属性情報の登録は必要だが、住所氏名は要求されない。

画質は768Kbpsだから良いとは言えないが、まあ見れる程度。
私は開始当初にちらっと見てみたあと放置していた。

ところが、たまたま立ち寄ったら「新造人間キャシャーン」が放映されていたので、ついつい見てしまった。

「新造人間キャシャーン」はタツノコプロが制作した、30年ばかり前のヒーロー物のアニメだ。
タツノコプロといえば「ガッチャマン」とか「タイムボカン」シリーズが有名だが、「キャシャーン」はヒーローが暗い。
善良な市民からガンバッテと期待されるのではなく、アンドロイドとして差別と偏見を受けながら孤独に悪と戦うのである。
私はこの手の屈折ヒーローが割と好きで(他に「デビルマン」とかね)、放映当時、気に入って見ていた。

さて冒頭の話に戻るのだが、この「GyaO」も番組の先頭と中頃にCMが挿入される。
ところが、なんとGyaOではCMスキップができないのである。

考えてみれば、スキップ操作ができないようにWebページを構成するのは簡単だ。
仕組み的には不思議はない。

しかし、「CMはスキップできないけど番組はいつでも見たいときに見られて、飛ばし見もできる」、これは放送業界がHDDレコーダに望んで実現されていないものだ。
それがネット放送であるGyaOではあっさりと実現されているのは、感慨深い。

アナログで垂れ流しの旧世代放送システムと、デジタル家電。
現在の電波放送は、技術的に釣り合わないものがねじれながら組み合わされている。

それよりも、サーバとクライアントが技術的に釣り合っているネット放送のほうが、実はユーザ、送り手、広告主の間の利害関係の落としどころを探しやすいのかもしれない。

そして、今のところネット放送には家電メーカーの居場所がない。
GyaOの受信機はパソコンだ。
放送業界が広告収入を守るべく、ネット放送へシフトする可能性だって考えられる。
そのとき、家電メーカーはテレビという製品カテゴリを失うのかもしれない。

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