半期末セールで、ちょっとだけ安くなっていたVolca modularを買ってみた。Rock oN eStoreで税込14,800円。
Volcaシリーズは2014年末にBeats、2015年にBassとKeysを買い、それ以降もいくつか買い足してきた。
最近ではどんなシンセサイザーでも、まあそれほど時間をかけずに把握できるのではないかと思っている。
だが、このような「倍音成分を多く含んだ鋸波や矩形波のオシレータの音を、フィルタで倍音を削りエンベロープで音量を削って整形する」シンセは「イーストコースト(東海岸)スタイル」というもので、実はこれとは違った「ウエストコースト(西海岸)スタイル」のシンセがあり、Volca modularはこの西海岸タイプなのだという。

正直、YouTubeでいろいろ音を聴いてみた限りでは、なかなかピンとくる音色は少なかったのだが、従来型のシンセはもうだいぶ慣れてしまったということもあり、新しい何かに出会えるのでは? という期待もあって(そしてセールもあって)、手を出してみた。
Volca Modularは一応モジュラー型、つまりオシレータ、フィルタ、エンベロープなどが別個のモジュールになっていて、音を出すにはそれらを結線しなければならない。また、結線は「音の信号の流れ」と「制御の流れ」という2つの区別を意識する必要がある。
・・・ということだが、実際には一応仮の配線が1パターン内部でできていて、結線なしでも普通に音は出せる。
だが、音作りには結線が必要だし、各モジュールの機能と入出力の意味を把握する必要がある。パネルにはすべての情報は載っていないので、付属のリファレンスカードは必携。
Volca modularのオシレータは、キャリアもモジュレータも三角波を使ったFM音源で、キャリアはウエーブフォールディング付き。
また、モジュレータの周波数は整数倍ではない値も選べる。
もうこのあたりで普通の「鋸波、パルス波」という普通のシンセとはちょっと違う。
また、出力が2つあり、1つはFM演算の結果だがもう1つはモジュレータを出力できるので、2VCOっぽく使うことが可能。
フィルタはLPFなのだが、アンプと一体となった「LPG」(Gはゲート)というもので、パラメータは「レベル」の1つだけ。
要はカットオフが下がると音量も同時に下がる。また、レゾナンスはない。
イーストコーストスタイルと比べると、音色づくりにおけるフィルタの位置づけが若干低い感じがする。
もともと、オシレータが三角波だから倍音は少なめだ。
それをFMやウエーブフォルダで波形を歪めて倍音を加え、LPGで時間変化をつけるという感じのようだ。
なお、LPGは2系統ある。モノシンセなのにフィルタが2つあるのは変な感じもするが、オシレータはキャリアとモジュレータの2つの信号を出力できるし、後述するように信号を演算するモジュールもあるので、それらの出力に異なった変化をつけてミックスすることができる。
エンベロープジェネレータは2種類あり、いずれもパラメータは2つだが、生成する波形は少し異なる。
左の方は、アタック・ホールド・リリースタイプの割と普通のエンベロープ。
右の方は、アタック・ディケイタイプのエンベロープで、ピーク位置をShapeで制御し、全体の時間長をTimeで制御する。
また、トリガー入力にエンドトリガー信号(左はリリース開始時、右はディケイ終了時に信号が出る)を接続すると、再度トリガーを掛けることができるので、これでLFOを作ることができる。
LPGの後段にはエフェクタとして「SPACE OUT」というものがついている。
リバーブということだが、聴いた感じだとmonotron delayのディレイに似た感じの音。
レベルを上げると左右のチャンネルの信号の差が拡がるので、それで拡がり感が出る。
以上が基本的なモジュールだが、これ以外に、シーケンサーと、「信号を演算する各種モジュール」がある。
シーケンサーはVolcaシリーズおなじみのシーケンサーに連動していて、ピッチ信号および4つのトリガー(1拍毎、2拍毎、3拍毎、4拍毎)を出力する。3拍毎の信号と、それ以外のどれかの信号を別々のエンベロープをキックするのに使うと、ポリリズムっぽいことができる。
信号演算は、まず「Woggle」という名前のサンプル&ホールドのモジュールがある。これでランダムな音階などを生成することができる。
また、このモジュールには、入ってきた信号をスムージングする機能もあり、これをCV信号に接続するとポルタメントを行うことができる。スムージングのパラメータは残念ながら固定。
他に、入ってきた信号を2分岐する「スプリット」(×2系統)および、ミックスする「ユーティリティ」モジュールがある。
ユーティリティモジュールは2入力+1制御信号で、入力A、Bを制御信号Cによって「A+B×C」および「A-B×C」でミックスしたものを出力する。
Cはノブで指定することも、別の信号で制御することも可能で、音声信号同士を掛け算すればリングモジュレーションになる。
最後に、これらを結線する際に「入力なのか出力なのか」「音声信号なのか制御信号なのか」を区別する必要があるが、それはパネル上で以下のようなルールで表示されている。
・基本、左が入力、右が出力
・白枠が入力、黒枠が出力
・耳(円形のタブ)がついているのは音声信号、ついていないのは制御信号
無暗に接続しまくるのも楽しいが、上記のリクツが分かっていると、何が起こるかある程度予測できるようになる。
例えば下図は、上で述べたような2VCOをポリリズムっぽく使う場合の結線。
オシレータのモジュレータ信号を2番目のLPGに入力し(紫)、そのLPGの制御信号は2番目のエンベロープジェネレータが生成する(赤)。
このエンベロープジェネレータのトリガ(黄)はシーケンサーの3拍毎の出力につないでいる。
従って、モジュレータの信号は3拍ごとの強弱がついてメインの信号に合成される。
以下のビデオ(英語だけど)は割とわかりやすいチュートリアル。
こちらは「応用編」で、ちょっと変わったモジュールの使い方を紹介している。
これは、エンベロープジェネレータをうまく使って三角波からパルス波を生成する例。さらにユーティリティモジュールでPWMも付けている。
こちらは最近Volca Modularを取り上げた「BAD GEAR」。でもディスっているわけではないくて、いい感じの紹介になっている。
こちらはVolca Modularの音の「奇妙さ」を堪能できるビデオ。
こちらは編集して割とちゃんとした楽曲に仕立てている。Volca Drumも使用。
MIDIインタフェースは無いがCV入力はある。ArduinoからCV信号を送っている例。
なお基板上には一応MIDI信号が出ていて、ハードウェアを追加すれば使える模様。
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