DFAMに付属するサンプルの音色からもう1つ。
「Electro-Thump」は荒々しい、ノイジーな音だ。
この音色もいろいろな音色が鳴っているように聞こえるが、実際には1つの音色をシーケンサーで1つのパラメータだけ変えている。これは前の記事の「Kick-Bass&Snare」と同様、シーケンサーのピッチ信号をVCFのカットオフの制御に使っている。
1音ずつゆっくり鳴らすとこんな感じ。
この音色のポイントは、VCO1でVCO2を変調しているところだ。
まず、2つのVCOのピッチは、
・VCO1:EGのみ
・VCO2:シーケンサーのピッチ信号のみ
で制御されている。
そして、SYNCがオンになっているため、VCO2はVCO1に強制的に同期されている。
シーケンサーのピッチが上がるとVCO2の音色が変化する。SYNCによりVCO2の波形はVCO1の周期で強制的にリピートされるが、その周期内でのVCO2の波形はシーケンサーのピッチに合わせて倍音成分が変化するためだ。
さらに、VCO1からVCO2へのFM変調がかかっている。ただ、FM変調といっても、この音色では
・キャリアはパルス波、モジュレータは三角波(モジュレータの波形は選択できない)
・モジュレータの周波数はキャリアの周波数と無関係
という使われ方で、かつSYNCもかかっているので、音色の変化はよくあるFM音源の金属的な音ではない。むしろ、モジュレータがキャリアより低い周波数の場合が多いので、LFO的な効果になりやすい。
また、VCO1は、EGがプラスに効いているので、EGがトリガされると高い音から低い音へ「ピュン」という感じで変化する。VCO2もSYNCされて同様の変化をする。
ブロック図にすると、こんな感じ。(使われていない部分はマスクしてある)
フィルタのカットオフは、シーケンサーのピッチでコントロールされているので、ピッチが低いときはFMやSYNCの倍音成分が抑制される。
VCOのEGをトリガし、シーケンサーのピッチを上げたり下げたりするとこんな音になる。
出だしの「ピュン」がVCOのEGで作られている部分だ。
ちょっと面白いのは、この音色ではVCA側のディケイタイムは最長の設定になっており、さらにトリガはシーケンスの第一ステップだけにかかっているところだ。VCAのディケイタイムが最長なので、1ステップ目でトリガすれば8ステップ目まで行っても音量は大して減衰しないのである。
この状態でシーケンサがピッチを変化させるので、音色が変化して冒頭のようなシーケンスが生成される。聴き直してみれば、「ピュン」という音は1ステップ目だけに出て、それ以外のステップには出ていないのが分かるだろう。
こんな具合で、DFAMは従来からあるパーツが新しい形で組み合わされている。しかも自由度がうまいぐあいに制約されているので、どういじってもなんだかパーカッシブかつヴィヴィッドな、独特の音が生まれてしまう。
いじっていると、あっという間に時間が経ってしまう、楽しい楽器だ。
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