今年のふるさと納税で選んだのは、Ankerのモバイルプロジェクタ『Nebula Capsule 3』。評判が良い製品ではあるがチョットお高くて、値下がりもあまりない、ふるさと納税向きの一品。
ファーストインプレッション
ファーストインプレッションとしては満足感が高い。正直、実際に使ってみるまではそれほど期待していなかったのだが、Capsule3の性能、使い勝手はいい意味で予想を裏切ってきた。屋内で夜間使う前提なら十分明るいし、音質もサイズの割にかなり良く、今のところ欠点は感じていない。以下はダイニングルームの壁に投射した映像の写真。対角120センチくらい(48インチ程度)だろうか。
体感的には、暗めの部屋(本を読むにはちょっと暗いかな程度)なら画面の横幅1.2m程度で投影するのは十分実用範囲だと思う。
以下は、かなり真っ暗にした6畳の部屋の大きい方の壁で大画面で投射した例。床はフローリングで、床からの反射がある。
ちなみに映像ソースはこれ。
ところで、モバイルプロジェクタというのは、地雷の多い製品カテゴリーだ。3万円以下の価格帯には中国の雑多なメーカーが入り乱れているが、ほとんどはイマイチな製品だと思う。数年前に1万円以下のものを買ってみたことがあるが、スペック表記はすごいが値段なりの製品だった。
現状、特に中国メーカーのプロジェクタはスペック表記があてにならないので注意が必要だ。以下、いくつか注意点を解説するが、Capsule3はどのポイントもクリアしている。
Netflixが映る
著作権保護のため、Netflixの視聴は何かと制約が多い。割と最近でも、Netflixが一部のプロジェクタで視聴できなくなったことがあったようだ。(ユーザ認証を厳しくするなどの変更の影響らしい。)
HDMIにはHDCPという著作権保護の標準的な仕組みがある。これはHDMIを流れる映像信号を暗号化してコンテンツを保護するものだ。なので、HDMI接続で投影するだけの、1万円程度のプロジェクタにFireTVなどを挿して使う場合は問題が起こる可能性は少ない。(ただし、Netflixに関してはそれでもいろいろ条件が厳しい。)一方、中途半端にAndroidを搭載したような製品や、ChromeCast/AirPlayなどの仕組みに依存した製品では問題が生じる可能性がある。ソフトウェアアップデートで問題が解消できる可能性もあるが、解消できない可能性もある。
Nebula Capsule3はGoogleTVを搭載しており、現時点ではNetflixもGoogleTVのアプリ上で問題なく視聴できている。GoogleTVのNetflixアプリは、スマホのNetflixの「セカンド画面」として動作することができるので、スマホ側のNetflixとも連動する。ただし、ChromeCastやAirPlay経由でスマホやタブレットのNetflix画面をミラーリングすることはできないので、その点は注意が必要だ。
表記通りの解像度
解像度は高い方が良いと思うだろうが、安価な中国製の製品には「フルHD対応」「4K対応」のように「対応」という表記がなされているものが多い。
これは、その映像信号を入力することができる、という意味だ。しかし、必ずしも表示する映像がその解像度であるわけではない、と思った方が良い。フルHDの信号を入力しても表示される映像は720p、なんていう製品は普通に存在する。(そういう意味では、先代のNebula Capsule2も720pだった。)
表示される映像の解像度は、入力された信号ではなく表示するデバイスの仕様に依存する。上記のような表記方法は、「入力信号の仕様」を「プロジェクタの表示能力」であるかのように錯覚させているわけだ。
Capsule3の仕様は1080pで、この通りの解像度の映像が表示できる。
歪みの補正、フォーカス調整が自動
Capsule3は、リモコンのボタンを押すと補正用のガイド映像を出力し、その結果を自分で取り込んで歪みの補正、フォーカス調整を行う。斜め方向に投影しても補正してくれるし、障害物があると回避してくれる。投射可能な領域の中で映像表示に適した平面のなるべく広い領域を自動で検出して、その位置に映像を表示することができる。
もちろん、斜めから投射した場合、スクリーン全面にぴったりフォーカスが合うことは無い。また、台形補正は光学的に行うのではなく、投影する画像のほうを変形して行っている。そのため、自動補正をすると投影可能な領域の中の一部しか使わないことになる。一般的にはその分だけ解像度が下がってしまうので、なるべく正面から適切な距離で投影するほうが、本来の解像度を発揮させるという意味ではベターになる。
とはいえ、自動の台形補正、フォーカス調整はカメラの自動焦点のようなもので、非常に便利だ。ちょっと昔のプロジェクタにはこんな機能は無かったから、無くても何とかなるかも、と思うかもしれないが、特にモバイルプロジェクタでは絶対この機能があるほうが良い。
ANSIルーメン表記
プロジェクタにおけるルーメン表記は、非常に問題がある。ルーメンとは「プロジェクタの光量」つまり明るさの指標だ。しかし、現状の市場では以下の2つの表記方法が混在している。
・ANSIルーメンまたはISOルーメン
・ルーメン
前者は測定方法などが規定されており、製品間の比較をする際に用いることができる。(ただしISOルーメン≒0.8ANSIルーメンの換算になる。)
一方、後者はメーカーが独自の方法で測定したもので、少なくともメーカーの異なる製品同士の比較には使えない。メーカー独自の方法での数値は、測定方法が決まっていないので、大きな数値になりがちだ。ANSIルーメンの製品の10倍以上のルーメン値なのに、実際に投影して比較したら暗かった、なんていうのは当たり前。
Capsule3の照度は「200ANSIルーメン」である(実測すると160ルーメン程度という情報もある)。モバイルプロジェクタだと300ANSIルーメンの製品も多いので、明るさで言えば若干低めとなる。ただ実感としては、日中のリビングやオフィスのような明るい環境で使うには厳しいが、夜間の屋内で使うには問題ないし、部屋を暗くして100インチ程度で使うのであれば十分に明るい。
なお、プロジェクタの明るさは、周辺の明るさ以外に画面のコントラストにも影響するが、Capsule3は「HDR10」に対応している。HDR10というのは、色深度10ビット(従来は8ビットなので、その4倍)でダイナミックレンジを表現できるというもの。映像信号の規格なので、映像ソースが対応している必要があるが、対応していれば映像のコントラストをよりクッキリさせることができるだろう。
上位機種のCapsule3 Laserは300ANSIルーメンなので、明るさ重視ならそちらも考慮すべきだが、個人的には価格差等々を鑑みると、総合点ではCapsule3のほうがよりお勧めのような気がする。
音質良好、ファンノイズ少
地味に結構驚いたのが、Capsule3の音の良さ。これ単体でモバイルスピーカーとして考えたとしても、なかなかのものだ。もちろんステレオ感は無いのだが、結構音量を上げても音割れしないし、低音も出ている。出ているといってもサイズの制限があるから、もちろん補正してお化粧した鳴り方ではあるが。
Bluetooth搭載なので、Bluetoothスピーカーモードに設定することもできる。(本体の電源ボタンの上にスピーカーモードボタンがある。)外出先などで、スピーカーとして使いたいという用途を想定しているのだろう。
また逆に、外部のBluetoothスピーカーに音声信号を送ることもできる。設定から外部デバイスとのBluetooth接続ができる。リモコンがBluetooth接続されているが、BluetoothヘッドホンやBluetoothスピーカーを接続することもできる。AUX Outがあるので、有線で外部アンプ/スピーカーを接続することも可能だ。
冷却ファンはあって、本体で音を再生しなければ一応ファンの音は聴こえるのだが、ノイズの周波数もそれほど高くなく、音量もノートPCのファンと同等かそれ以下なので、通常の利用ではおそらく問題にならないだろう。
リモコンの出来が良い
Capsule3はCPUパワーもそこそこあるようで、リモコン操作に対する反応が良い。また、リモコンの設計はなかなかこなれていると思った。バックライトが内蔵されててリモコンを動かすと点灯するので、暗闇の中でも操作ができるし、YouTube/Netflix/prime videoの専用ボタンが用意されていてワンタッチでサービスにジャンプできる。また、スピーカーミュートボタンがあるのも良いところ。
なお、近所の量販店でCapsule3 Laserを見たら、リモコンはCapsule3のと違って、YouTubeなどの専用ボタンが無かった。ここは専用ボタンがあるCapsule3のほうが便利だと思う。(このリモコンは「GoogleTV用のリモコン」であるらしく、最近はCapsule3 LaserのGoogleTV版が出ているので、もしかしたらそちらは同じリモコンかもしれない。)
なお、上述したようにリモコンはbluetooth接続で、プロジェクタに向ける必要は無い。これも地味に便利だ。
Capsule3かCapsule3 Laserか
Capsule3 Laserは価格が5万円アップで明るさが300ANSIルーメンに向上する。要は明るさにその値段を出せるかということになるが、逆にその値段(10万円以上)出すのであれば、プロジェクタの選択肢は他にもいろいろある。Capsule3 Laserはサイズやバッテリで特色はあるが、モビリティだけでなく、明るさ、画質、遅延、音質など他の側面を重視するなら他の機種も検討すべきだろう。
注意点と結論
Anker Nebula Capsule3はフルHD解像度で、GoogleTVを内蔵し、インターネットの大抵のコンテンツを視聴することができる。つまりプロジェクタ版のGoogleTV端末だ。これ自体は他のGoogleTV搭載プロジェクタと同じで、GoogleTV=専用にカスタムされたAndroidOSなので、CPU性能/RAM/ストレージ容量に使い勝手が左右されるが、この点Capsule3はきびきびと反応し、気になるところは無かった。Nebula特有のアプリとしては、AirPlayでのミラーリング用のNebula Castというアプリがインストールされている。
プロジェクタ特有の側面としては、自動調整機能は大変有能。また、画質・音質もおそらくプロジェクタ側で補正して、体感上の見映えや音の迫力を増すようにしていると思う。これもうまく機能している。
注意点は、何を目的とするか。設置場所を決めて大スクリーンで映画を楽しみたいなら、Capsule 3では不足を感じると思う。自分のようにカジュアルに使いたいなら、これだけの画質音質が得られれば十分で、むしろ機械に弱い家族にも扱えることが有難い。
というわけで、購入前に置き場所やどこに映すか、何に映すか、を検討しておけば失敗することは無いだろう。
追記:天井吊りにしてみたら、すこぶる快適だった。

おまけ:Capsule 3って国産?
今回、ふるさと納税の返礼品でCapsule3を購入(?)したわけだが、そもそもCapsule3って国産なのだろうか。ふるさと納税の納税先は、茨城県稲敷郡美浦村(みほむら)という自治体。
Capsule3はこの村で製造されているわけではないが、Capsule3のパーツの一部を製造している会社の拠点が、ここにあるのだそうだ。

調べてみると、企業名は判らなかったが、ネビュラ以外にも過去いくつかのプロジェクターが返礼品になってきているので、その会社の製造した部品が各社のプロジェクターに使われているらしい。
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