Arturia MicroFreakレビュー(2)

Arturia MicroFreakを購入したのは2019年、今から4年とちょっと前だ。
当時、結構気にっていろいろ使いこんでいたのだけれど、4音パラフォニックという限界や、出音のある種のクセみたいなところへの飽きもあって、ここ最近はしまいこんだままになっていた。

しかし、その間にもArturiaは地道にMicroFreakのアップデートを重ね、この5月にはグラニュラーシンセシス機能が追加された。

これが気になっていたので、MicroFreakを引っ張り出してアップデートしてみた。
ファームウェアアップデートは、MIDI Control Centerを立ち上げてMicroFreakをUSBで接続すれば自動で行われる。

グラニュラーシンセシスというのは、サンプル再生がベースになっている合成方式だ。
サンプルから数msec~数十msec程度の長さの短いサンプル=「グレイン」を切り出して、それを繰り返し再生することで音を作る。

グレインを再生しながらグレイン自体を移動させ、その移動速度を変えればサンプルの再生速度を(ピッチを変えずに)変えることができる。

また、グレインは1つとは限らず、複数のグレインが時間差でサンプルの違う部分を再生させることもできるので、人の声で言えば合唱のような効果を出すことができる。

今回のアップデートでは、切り出し方や再生の仕方が異なる4種のシンセシスエンジンが追加されている。

■Sample

サンプル再生。これ自体はグラニュラーシンセシスではない。
サンプルの開始点、長さ、ループポイントを設定できる。長さはマイナスにすると逆再生ができる。
ピッチコンバージョンは搭載されていないので、低い音はゆっくり、高い音は速く再生される。

なお、全エンジン共通で、サンプルの選択は「SHIFT+Typeノブ」で行える。
MicroFreakにインストールできるサンプルは、トータルで3.5分間(210秒)、128個まで。デフォルトで52個のサンプルがインストールされている。もちろんサンプルはユーザも追加することができる。

ちなみに、このサンプルの選択自体をモジュレーションのターゲットに設定する(Assign1~3のいずれかを押しながら、SHIFT+Typtノブを動かす)こともできる。ここでモジュレーションソースをキーピッチ(モジュレーションマトリクスの「Key/Arp」)にすると、キーによって異なるサンプルを再生することが可能だ。General MidiにおけるCh10(リズムセクション)と同じようなことができる。

■Scan Grains

シンプルなグラニュラーシンセシスのイメージに近い。
サンプル全体を先頭から最後までグレインがスキャンする。グレインのある場所の音が音高に合わせた速度でループ再生される。

1つ目のパラメータは、グレインがサンプルをスキャンする速度。
これは0倍(グレインが移動しない)から5倍まで設定できる。5倍だと、サンプルの実際の長さの1/5の時間で再生されるわけだ。
ただしグレイン自体の再生速度はスキャン速度に関係なく、音高で制御される。

つまり、スキャンする速度を1倍に設定すれば、単にサンプルが再生される。その時、ピッチは音高に合わせて変わるが、再生時間は変化しない。
ただしグレインの大きさ(長さ)は変更できないので、音高が高くなれば同じ部分が繰り返し再生され、音高が低くなれば飛ばし飛ばしで再生されているのが分かってしまう。

グレインをより小さくすると、グレインのジャンプ幅が小さくなるので、この「繰り返し」や「飛ばし飛ばし」の部分を分かりにくくすることができる。
ここで登場するのが2つ目のパラメータ「Density(密度)」で、どのくらいたくさんのグレインを使うかを指定できる。

スキャンする速度を1倍にして、Densityを上げていくと、サンプルの再生時間を変えずに音高だけをキーに合わせて変えたような感じになる。
ただしDensityを上げすぎると、短いディレイを大きなFBゲインでかけたような感じに近づくので、Densityはサンプルに合わせて調整する必要がある。

さらに、3つ目のパラメータ「Chaos」を上げていくと、グレインの大きさやピッチにランダムな要素が加わり、等間隔ではなくなる。そのため、若干ノイジーになるが上記のディレイ的な要素は薄まる。

■Cloud Grains

このエンジンは、グレインの開始点とサイズを変えることができる。
サンプルの1部分を切り出して、波形としてループさせるようなイメージだ。

1番目のパラメータは開始点。
Scan Grainsと違って、グレインは移動しない。開始点から一定の長さの範囲を音高に合わせてループ再生する。

ループの長さ(グレインのサイズ)は2番目のパラメータ「Density」で変えることができる。
Densityを上げると、グレインは短くなるので、より短い範囲をループ再生することになる。

3番目のパラメータ「Chaos」は、Densityの値にランダムな外乱を与える。これによってグレインがランダムに長くなったり短くなったりする。

時間的な音色変化があるサンプルデータに対して、開始点の値にエンベロープなどからモジュレーションをかけると、音色変化の効果が得られる。

■Hit Grains

Cloud Grainsと似ているが、3番目のパラメータ「Shape」はグレインの出だしと終わりにフェードをかける。
つまり、グレインを再生するときに、「だんだん音量が上がり」「だんだん音量が小さくなる」ような効果をかける。
Shapeが小さい時ほどこの効果が大きく、Shapeを上げると逆にサンプルを単に切り出したような感じになる。

グレインのサイズはDensityを使って変えられ、値を大きくするとグレインは小さくなり、繰り返しの周期が速くなる。
グレイン自体のフェードイン・フェードアウトがあるので、普通のシンセで言えば、LFOを音量にかけたような感じになる。
このとき、Shapeが小さいとLFOは三角波のような波形、Shapeが大きいときは矩形波のような波形に近づく、といえばイメージは分かるだろうか。

Densityの値にエンベロープなどからモジュレーションをかけると、良い感じの効果が得られる。

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というわけで、新しく追加されたサンプルプレイバック/グラニュラーシンセシス関連の機能、なかなか面白い。
正直、MicroFreakを購入した時はここまでの拡張がソフトウェアで行われるとは想定していなかった。

MiniFreakのシンセシスエンジンは3つしかパラメータが使えないので、結果的に異なるエンジンを複数用意しなければならなくなったと思われるが、その機能の切り分け方は良かったと思う。
パラメータにエンベロープなどからモジュレーションをかけることで、いい感じの音色変化が得られるし、パラメータが少ない分、その効果が直接的に分かり易い。

発売から4年以上になるが、まだまだアップデートは期待できそうなので、MicroFreakはお買い得と言えるだろう。

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