以前から気になっていたBehringerのCATを買ってみた。
CATはユーロラック・セミモジュラータイプのシンセサイザーで、Behringerの同種のシリーズの中では比較的初期からラインナップされているが、若干マイナーな感じではある。元ネタとなっているOctave Electronics社の製品自体が、ARP Odysseyをパクった感じの製品だったらしく、若干、パクりのパクりみたいな位置づけっぽい。ちなみにARP Odysseyは以前KORGが復刻して売っていた(当時7万円くらい?)けど、今は生産終了している。


だが、それでもそもそも音が悪ければ、Behringerに復刻されるようなことも無かっただろう。数少ないレビューを見ると、音は結構良いという評判。
なので、結構以前から気にはなっていたのだが、円安進行で価格は上り調子だし、中古でもあまり新品と大差ない3万円を切るか切らないかという感じだったので、数年間様子見していた。
が、ここ最近ベリンガーの製品はなぜか値下げ傾向にあって、ヨーロッパでは169ユーロということなので29000円くらい。国内でもサウンドハウスでは、この製品も若干値下げされて定価は31,680円に。サウンドハウスだとポイントが5%付くので、それも考えるとほとんど海外と同水準の価格だ。
そこに、サウンドハウスの期間限定のポイント+10%クーポン(元の5%と併せて15%)が出てきて、もう、えい、買ってしまえ!ということで購入した。
ということで一昨日届いて、早速鳴らしてみたが、なるほどオシレータとフィルタは良いねこれ。
VCO
オシレータは2VCOなのだが、それぞれにサブオシレータが付いている。サブオシレータが2つ、というのはCATはデュオフォニックにできるので、2音それぞれに独立のサブオシレータを持っているのだ。

デュオフォニックとモノフォニックの切り替えは、VCO1の右上のKEYBOARD CONTROLというスイッチ。POLYだとデュオフォニック。このモードでは、VCO1は最高音、VCO2は最低音を鳴らす。
このスイッチがOFFの場合、VCO1のピッチはFREQUENCYノブで決定する(モジュレーションはできるがベースとなるピッチはキー入力によらず固定)。これは後述するように、VCO1をモジュレーションソース(超高速LFO)として使用できるので、そういう使い方をするときに利用価値がある。
VCO1は4波形(サブオシレータは方形波、それに鋸波・三角波・PWM)、VCO2は3波形(サブオシレータ、方形波、鋸波)を任意の音量でミックスできる。結構、音圧高めの音を作ることができる。
とはいえ、これだけなら単に波形を重ねることができる、というだけだ。CATのVCOの真骨頂はFM変調とSYNC変調にある。
FM変調
CATのVCOは、LFOやエンベロープでピッチを揺らす以外に、「もう一方のVCOの波形でピッチを揺らす」ことができる。その設定はVCO1のパネルの真ん中あたりにある「VCO2」という項目、およびVCO2のパネルの中央右あたりに「VCO1」項目だ。これらを選択したとき、そのVCOのピッチはもう一方のVCOの波形でコントロールされる。
いわゆるFMシンセと違って、VCOの波形はサイン波ではなく、前述のように4波形ないし3波形を重ねた波形だ。そして、FMシンセと同様にこれらの波形の周波数は可聴域だ。モジュレーションの深さをうまく調節して、変調ソースの波形のピークで、変調のターゲットのオシレータの周波数がちょうど倍音の範囲に振れるように設定すれば、音色として聴けるものを作ることができる。
さらに、VCO1の波形でVCO2を変調し、そのVCO2の波形でVCO1を変調する、フィードバックFMのようなことも可能だが、元波形自体がサイン波ではないので、どんな音が出るかはかなり偶然の要素が大きくなる。
SYNCモジュレーション
CATではVCO2からVCO1をSYNC変調できる。VCO1の波形を、VCO2のピッチ信号で「リセット」する。この設定は、VCO2の右上の「SYNC」スイッチにある。MODE A、OFF、MODE Bとなっているが、他のシンセで一般的についているSYNCと同様なのはMODE Bのほうだ。
SYNCとして用いられるのはVCO2のタイミング情報で、VCO2の各波形の音量は関係ないので、音量をゼロにしてもSYNCは動作する。
また、SYNCが有効になっていると、VCO2のピッチはVCO1のピッチに依存しなくなる。逆にVCO1のピッチはFREQUENCYノブで自由に設定できる。通常は、VCO2の周波数よりも高い周波数で使う(COARSEを中央よりも右へ回す)ことで、いかにもSYNCっぽいギュイーンという感じの音色を出すことができる。
MODE Aは、VCO2でVCO1をリセットする点はMODE Bと同様なのだが、VCO2の信号としてサブオシレータが絡んでいる。ちょっとうまく説明できないのだが、波形を見ているとそう感じられる。VCO1をリセットするVCO2の信号を、さらにVCO2のサブオシレータ(方形波)でオンオフしているような感じだ。
LFO/エンベロープ
LFOとエンベロープでVCOのピッチを揺らすこともできる。LFOの周波数は0.3Hz~30Hzと、それほど広いレンジではない(パネルには0.03Hz~とあるが、実際の周期は30秒もなく、3秒くらいなので、たぶんプリントミス。YouTubeでビデオを確認してみても、私の個体の不具合ではなさそうだ)。波形はサイン波と矩形波。サイン波のLFOはちょっと珍しい気がする。
EGは2つついていて、1つはADSRタイプ、もう1つはARタイプ。VCOのピッチおよびVCO1のPWMは、LFO+エンベロープでモジュレーションすることになる。
LFO波形としては、サイン波/矩形波の他に、LFOの周期でノイズまたはVCO1の波形をサンプル&ホールドした波形を使うこともできる。
また、ADSRはLFOの周期でリトリガーする設定があり、これを使えばADSRエンベロープを複雑な波形のLFOとして使うこともできる。
これらを組み合わせると、モジュレーションの信号としてかなり複雑なものを作ることが可能だ。
なお、パネル上ではモジュレーションソースは
LFO ⇒ サイン波の波形または矩形波の波形
エンベロープ ⇒ ADSRの波形またはARの波形
でそれぞれの信号が表現されている。「LFO」とか「EG」という表示は無いので、最初はちょっと分かりにくい。ちなみにPWMは「サイン波のLFO」「ADSRエンベロープ」「固定値(DC)」でモジュレーションすることができる。

フィルタ/EG/VCA
フィルタは24db/Octのローパスフィルターで、レゾナンスを上げるとその分音圧は下がるが、moogラダーフィルタほど極端に下がったりはしない。
自己発振するし、カットオフのキートラックの量も調整できるので、頑張って調整すれば自己発振で音程を奏でることも可能だ。
カットオフ周波数のモジュレーションは、VCO2と同じく、LFO(S&HもOK)およびエンベロープ(またはVCO1)で行うことができる。VCO1も利用できるところがミソで、VCO1の信号をオフにしてオーディオパス上に流さないようにする(下の写真左上のスイッチ)こともできるので、そうするとVCO1をLFOのように使うことができる。LFOといっても可聴域の信号まで出せるから、超高速LFOだ。この使い方をする場合、VCO1の「POLY/OFF/MONO」のスイッチはOFFにしておくのが分かりやすい。

フィルタの右隣りはEGで、ADSRタイプとARタイプだが、ADSRにはリピートの設定がある。OFFなら普通にワンショットで動作し、GATEDとAUTOではLFOの周期でリトリガーされループする。GATEDならキーを押している間だけ、AUTOならキー入力に関係なくずっとループ動作する。従って、CATではADSRをAUTOに設定しておけば、MIDIやゲート信号を入力しなくても音を出すことができる。
ADSRリピートの設定の下には、何故かLFOの設定が2つ。左側がサンプル&ホールドする信号の選択で、ノイズは一般的だがVCO1も選択できる。右側はGATE信号がトリガされてからLFOが駆動するまでのディレイで、実際には突然ONになるのではなく、じわじわと強度が上がっていく感じの動作だ。
その隣は上段がVCAで、設定はメインボリュームとVCA制御のエンベロープの選択のみ。下段はオシレータにミックスするノイズの音量になっている。
感想など
CATは、ベースとなる部分はスタンダードだが、VCO間およびフィルタへのモジュレーションが特徴になっている。このモジュレーションの自由度というか結果の予測が難しいところは、ちょっとDFAMを連想させるところがあった。
FMやSYNC、VCO1を使ったモジュレーションなどを使いこなせば、面白い音作りができそうだ。ただし、音程も自分でチューンする必要があるし、シンセサイザー初心者には難しいかもしれない。
最初のシンセサイザーとしては全くお勧めできないが、2台目以降のシンセとしては、音が気に入れば入手してみるのをお勧めする。(安いし!)
以下のビデオでは、LFOでエンベロープをループさせつつ、VCO1でVCO2を変調して効果音的な音作りをしている。CATの持つポテンシャルを感じることができるだろう。


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