HydraSynth Explorer レビュー(3)


前回はオシレータセクションを紹介したので、今回はフィルターセクションを紹介する。

HydraSynthのフィルタは、デジタルシンセの特権で、様々なフィルタを選択することができる。しかもフィルタセクションを2つ持っており、これらを並列または直列に接続して使うことができる。

二つのフィルタのどちらにどれだけ信号を振り分けるかを、ミキサーセクションでオシレータごとに指定することができる。例えば、フィルタを並列にして、一方に100%の信号を流せば片方のフィルタだけを使用することができるし、50%:50%で流せば2つのフィルタ、2つの特性、2つのカットオフで処理した結果をミックスすることもできるわけだ。

Filter1とFilter2は同じではなく、Filter1は様々なフィルタを選択できるが、Filter2は選択肢は2つだけだ。これらは後述する。そのほか、Filter1はオーバードライブを内蔵しており、ディストーションを付加することができる。オーバードライブはフィルタの前段に置くか後段に置くかも指定可能だ。

というわけでフィルタの種類だが、Filter1では以下のように16種類のフィルタが用意されている。

最初の4つはmoog型のラダーフィルター。「アンコンペンセーション」と「コンペンセーション」があるが、後者のほうが低音がボリューミーになる。moogのフィルタはレゾナンスを上げると音量が減ってしまうのだが、この通常タイプが「アンコンペンセーション」で、音量の減少が起こらないのが「コンペンセーション」だ。ちなみにコンペンセーションとは「補償」という意味。

続いて、ローパスゲート。これはVolca modularの記事でちょっと触れたことがあるが、カットオフを下げると音量も小さくなるフィルタで、ウエストコーストタイプのシンセの音をシミュレートするのに使えるだろう。なお、このローパスゲートはウエストコーストのLPGと違って、レゾナンスの設定もできる。

続く2つはKORG MS-20のフィルタのシミュレーション。このタイプのフィルタはレゾナンスを上げた時のワイルドな感じに特徴がある。

その次の3つは名称に「3-Ler」とある。このフィルタは知らなかったのだが、Ian Fritzという人が発明した回路で、SynthcubeというEurorackメーカーがこれを使ったシンセを販売しているらしい。特徴はフィルタが「3-pole」であるということで、2-pole(12db/oct)と4-pole(24db/oct)の中間の減衰が得られるようだ。

その次の3つは「Stn」という名称でLPF/BPF/HPFが用意されている。これは、シュタイナー・パーカーフィルタだ。このタイプのフィルタはArturiaのMinibrute/Microbruteで採用されている。Microbruteは持っているが、独特の音色がある。ただしこのHydraSynthのフィルタはMinibruteのシミュレーションではなく、独自のフィルタのようだ。

残りの3つもHydraSynthオリジナルのフィルタで、1次の(ほとんど抵抗とコンデンサだけで作るような)ローパスフィルタ、4-poleの2段連結に相当する急峻なローパスフィルタ、それにフォルマント・フィルタとなっている。このあたりは、どれも汎用性はやや低いが、ほかのフィルタでは出せない時間的な変化を出すのに使えそうだ。

Filter2のほうは選択できるフィルタは2種類で、「LP-BP-HP」型のフィルタと「LP-Notch-HP」型のフィルタ。ノッチフィルタはBPFの逆で、特定の帯域だけゲインを下げるように働く。

Filter2は、いずれのフィルタもステートバリアブルフィルタで、フィルタ間のモーフィングができる。つまりパラメータによって、LP/BP(or Notch)/HPの各フィルタの間をスムーズに移行できる。いずれも12db/octで、レゾナンスもあるので普通に2-poleフィルタとして使うこともできるし、Filter1と直列につないで効きの強いイコライザ的な使い方もできる。

以上、HydraSynthのフィルタはデジタルシンセの特長を発揮していると言えるし、取り揃えているフィルタの種類もバランスよくリーズナブルだと感じる。
今後のファームウェア更新で、さらに新しいフィルタが追加される可能性もあるだろう。

なお、フィルタセクションには、5つあるEGとLFOのうち、EG1とLFO1が括り付けられている。EGとLFOについては次回紹介したい。

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