前回はほとんど概要だけで終わってしまったので、今回はHyraSynthの最大の特徴であるオシレータの自由度について少し紹介してみる。
HydraSynthのオシレータはウエーブテーブル音源だ。そのウエーブテーブルの波形を、ミューテイターというブロックで変形して、元の波形とは違う波形(ミュータント)を作ることができる。ミューテイターはOSC1とOSC2にそれぞれ2段用意されている。
ウエーブテーブルは34グループ219種類で、名前を見てもよく分からないものが多い。倍音分布の一覧を作っている方もおり、場合によってはこれを見る方が波形を選択しやすいかもしれない。
また、OSC1とOSC2には「WaveScanモード」があり、任意の8個の波形をモーフィングすることができる。これ自体はProphet VSやWaveStationに似ていて、必ずしも斬新なものではないが。
OSCの後段にあるミューテイターは、8種のアルゴリズムから1つを選択する。その内訳は以下のように、FM変調、波形の重ね合わせ(SuperSAWのようなもの)、オシレータシンク、PWM×3種類、高次倍音の付加、波形を位相反転して元の波形との差分を得るPhazeDiffとなっている。
いずれのアルゴリズムも、基本的には倍音成分を付加する方向に働くが、付加しすぎればノイズに近づいていく。
アナログシンセでおなじみのPWMも、FM変調も、ミューテイターの一種だ。そういったものを包含するミューテイターとは何なのか、といえば、「ウエーブテーブルの読み出し位置+読み出した結果の加算方法」を制御する仕組み、と考えられる。ただしミューテイターは「パラメータ」ではなく、それ自身がパラメータを持つ「波形変形器」で、コントロールはあまり直観的ではない。正直自分でも、文章で表現できるほど完全には理解できておらず、いじってみて結果を確認するしかなかったりする。
さらに、これらをリングモジュレータに通すことができるので、付加した倍音のさらに差分や合計の成分まで生じてくることになる。これとは別に3つ目のウエーブテーブル(ミューテイター無し)、ノイズジェネレータもあるので、めちゃくちゃ強力なオシレータだ。
ただ、他のデジタルシンセの場合はパラメータをどういじってもそれなりに「イイ音」が出るようにチューニングされている製品が多いが、HydraSynthはそういう印象はあまりなく、ヘタすればノイズや耳障りな音が出てしまいがちではある。こういったところが、初心者向きではない理由ではある。解っている人には、面白いものではあるけれど。
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