YAMAHA reface CSを購入(2)

引き続きreface CSの話。
これ、良い製品だと思うが、スペックだけ眺めると他社に見劣りするように見えるかもしれない。
なのでちょっと詳しめに紹介してみる。
reface CSの音源部分はYAMAHAのバーチャルアナログ音源「AN音源」だ。
かつて「AN1x」というキーボードに搭載されていた。
また、プラグインボードになって「PLG-150AN」としても販売されていた。
AN1xは1997年頃の製品で、Nord Leadが一世を風靡した後のバーチャルアナログブームの中で発売された。
そのため「プアマンズNord Lead」的に見えてしまう面もあったが、音の良さは定評がある。
私も当時ちょっと買おうかどうしようか悩んだ記憶がある。

構成としては2VCO-HPF-LPF-VCAという一般的なものだが、途中にミキサーがあってVCAの出力信号をフィードバックして再入力しているところが、変わっているといえば変わっている。


(PLG-150ANのマニュアルより)

reface CSは、このAN音源のブラッシュアップ版を使っているという。

柏崎 氏:Yamahaには元々、AN1Xに搭載されていたアナログフィジカルモデリング”AN音源”というものがありました。その開発者が密かにその音源をブラッシュアップさせていたんです。いつかそれを使ってみたいと思っていたのですが、reface CSで採用することができました。しかしAN音源は出音はすごく良いのにパラメーターがすごく多くて複雑でした。その一方、オリジナルのCS01はシンプルな操作ではあるけれど音のバリエーションは狭いモノラルの音。相反していますよね。そして最終的にreface CSはシンプルエディット&カラフルサウンドというコンセプトを決め、少ないツマミでいかに音の幅を作るかを考えることにしました。
Yamaha reface 開発者インタビュー。『シンセサイザーの楽しみ』ともう一度向き合おう。情熱とこだわりがシンセの歴史を変えて行く! | Rock oN 音楽制作機材の最新ニュース & レビュー

この操作系は音づくりという意味でも楽器としての操作性という意味でも、よく練られていると思う。
プリセット選択式のように「とりあえずここだけ操作すれば音は選べる」という部分が無く、同じ大きさのスライダがずらりと並んでいるので初心者にはとっつきにくいかもしれない。

でも、実はハードルは意外と低いのである。
簡単に紹介しよう。
左右両端から、中央部分へ向かって説明していく。
左右の端は楽器演奏中に操作しやすい場所だ。
特に、左のほうが(右手で弾きながら操作する際に)使いやすい。
一方、中央部分は事前に作り込むために使う部分。
refaceはディスプレイもバックライトも無いので、演奏中に手を伸ばしにくい中央部分のスライダは扱いづらい。
一番左端は、ピッチベンダ、ボリューム、オクターブチェンジが並んでいる。

右端は、エフェクターだ。パラメータは最低限。ディストーションがあるのは嬉しい。
リバーブが無いが、リバーブを付けるとしたらエフェクターを2段にしなければならないだろう。

左から2番目は、ルーパー。これはMIDIルーパーで、要は簡易シーケンサーだ。
2000音を記録することができる。
録音したデータの上にオーバーダブすることもできる。
作曲の補助や、3オクターブという鍵盤の音域をサポートするために使えそう。
スライダをCLEARまで持っていくとデータは消える。
また、電源を切れば消えてしまう。

右から2番目はエンベロープ。
一般的なADSRタイプで、制御対象をフィルターと音量の間で連続的に変化させることができる。
単純に切り替え選択にしなかったことで、音作りの自由度は上がっている。

左から3番目はLFOとポルタメント。
LFO波形は選択できず、三角波(サイン波かも?)一択。
LFOの係り先は、音量・フィルタ・ピッチのほかに「OSC」があるが、これはOSCのタイプによって実際に変化するパラメータが異なる(後述)。
ポルタメントは「MONO/POLY」の切り替えを兼ねている。スライダを上に動かすほど、ゆっくり音程が変化する。

右から3番目はフィルター。
カットオフとレゾナンスだけのシンプルなパラメータだが、スライダの大きさを変えてあるあたり、配慮が行き届いている。

最後は中央部、オシレータ。
「TYPE」は、下からノコギリ波、パルス波、オシレータシンク、リングモジュレーション、FMを表している。
それぞれのTYPEに対して、パラメータは「TEXTURE」と「MOD」の2つだけに集約されている。
これ以外に、LFOで制御されるパラメータがあるので、実際には固定パラメータが2つと時間軸で変化するパラメータが1つということになる。

パラメータの内容は以下のようになっている。

TEXTURE MOD LFO
SAW VCO2(1オクターブ下)音量 Super SAW VCO1のピッチ
パルス VCO2のピッチ Pulse Width Pulse Width
SYNC VCO2のピッチと音色 VCO2のピッチの変化幅 VCO2のピッチ
リング VCO1のピッチ VCO2のピッチ VCO2のピッチ
FM 変調の深さ モジュレータのピッチ 変調の深さ

reface CSのフィルターは、レゾナンスとカットオフの組み合わせで表情が大きく変化するので、これだけのパラメータだが音色作りの幅はかなり広い。
作った音色は本体には保存できないが、外部に保存する方法はある。
一つは公式iPhoneアプリ「reface Capture」で保存する方法。
reface captureで音色を保存・管理! « Yamaha Synth Blog ヤマハシンセブログ
もう1つは、Chromeブラウザを使ってクラウド上のサービス「Soundmondo」へ保存する方法だ。
ChromeはMIDIに対応しており、アプリケーションはWebページで実行されるので、USB MIDIドライバだけインストールしておけばよい。
SoundmondoはSNSとして音色を交換することもできるし、Private設定で自分用に音色を保存することもできる。
進化するreface、今度は音色を世界中のユーザーと共有へ : 藤本健の“DTMステーション”
Soundmondoを使ってみたが、音色管理としては申し分ない。
サイトにアクセスして「Create」ボタンを押した時点で音色データは自動でクラウドへアップロードされるので、ほとんど何も考えずに音色を保存することができる。
ダウンロードも、音色を選択して「Sync」ボタンを押すだけ。
欲を言えばSysExファイルとしてローカルにもダウンロードできると良いと思うが、まあそれは自分でやろうと思えばできる。

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