1985年にYAMAHAがDX7を発売し、大ヒットとなって以来、シンセサイザーの世界は一挙にデジタルに切り替わった。実際、レコードがCDになったり、何もかもデジタルになりつつある時代だった。
そんな中、1987年にRolandが渾身の力で送り込んだデジタルシンセが「D-50」だった。これも大ヒットし、「Fantasia」などいくつかの音色がレガシーとして今に引き継がれている。
D-20は、D-50の1年後、1988年に弟分として発売されたシンセサイザーで、音源部分はエフェクタやDACなど、D50よりもダウングレードしている部分があった。一方で、D-20はRoland初の(今でいう)「ワークステーション」タイプのシンセサイザーで、マルチティンバーであり、シーケンサーとフロッピーディスクドライブが付いていた。
D-20は、自分が配属になった大学院の研究室に置いてあって、聞けば研究に利用するという名目でシンセ好きの先輩が研究費で購入したものだった。その先輩に勧められてRoland U-20を買った話は以前書いた。

D-20は、それまであまりシンセを「実際に」いじったことがなかった自分にとって、かなり衝撃的だった。研究そっちのけでD20をいじっていることがよくあった。
最初に驚いたのが「One Note Jam!」という音色で、「え、これ1つで音色なの?どうなっているの?」と思ったものだ。
D20の出音は、当時の感覚でもちょっと精彩を欠くものはあった。多分、圧縮やサンプリングレートの関係で高域成分を欠いていたかもしれないし、ベースの音にもパンチが無かった。
そんなD20のことは時々思い出すことはあったのだが、先日メルカリで動作品の中古を手頃な価格で見つけた。4000円+送料2500円。まあこれくらいならいいでしょう、というわけで、ついポチッてしまった。
実機を触るのは30年以上ぶり。今となっては懐かしい音だ。「アナログ」と「PCM」という2つの時代の狭間にあって、どちらでもないフェイクっぽい音かもしれないが、それでも何とか良い音を作ろうという執念のようなものが感じられる。
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